5分でわかるトゥーンの歴史(1)

 トムとジェリー、バッグス・バニー、それにポパイ。あなたが、またはあなたのお子さん達が今もTVやDVDで楽しんで見ているこれらの作品が、今から50年も前に作られたものだという事を知っておられるだろうか?
 たとえばトムとジェリーの第一作「上には上がある」が公開されたのは1940年。太平洋戦争の直前である。ミッキー・マウスとなると、デビュー作「蒸気船ウイリー」は1928年の作品だし、バッグスやダフィ・ダック、ポーキー・ピッグといったルーニー・チューンズのメンバー達も1930年代にはすべて出揃っていたのだ。

 アニメーション自体の起源を探ると映画の誕生そのものにまで行き着いてしまうので、ここでは大雑把に「カートゥーン」、つまりおなじみのキャラクター連中がギャグ・音楽・動きで人々を楽しませる商業アニメに話を絞るが、彼らはトーキーの出現と共に1920年代に誕生し、その後の20年間で試行錯誤も実験も発展も長編化も、ぜーんぶ済ませてしまい、40年代には既に完成期に入っていたのだ。 たとえばあのディズニーの映像技術の極地「ファンタジア」も1940年の作品なのである。日本ではアニメどころが実写でもカラーなんて不可能だった時代に、だ。この1本のアニメの中には残酷なまでに国力の差が出てしまっている。実際、戦時中もアメリカでは大量のトゥーンを製作し、劇場公開するゆとりがあったのだ。

 当時のアメリカの映画館では、劇映画の前にニュースと漫画映画を上映する形式を取っており、MGMはトムとジェリー、ワーナーはバッグス・バニー、ユニバーサルはウッドペッカーと、各社競うように製作していた。だからこそ1950年代までの黄金期のトゥーンには、動画枚数をかけた贅沢な動き、色彩の豊かさ、音楽演出の細かさ、子供だけでなく大人の観賞に耐えうるギャグなど、21世紀となっても充分DVDコンテンツとして通用するほどに完成度が高いのである。

 この頃の「古き良きトゥーン」のガイドブック代わりとしては、「ロジャー・ラビット(88')」を観る事をお勧めする。公開当時は実写とアニメの合成という技術面ばかりが話題になった映画だが、グーフィーにドルーピー、ベティ・ブープと映画会社の枠を越えて共演するトゥーンスター大集合は一見の価値アリ。

 そして、パワーパフファンならチェックしてほしいのが「ベティ・ブープ」。ウサギなどの動物キャラがメインを張る事が多かったオールドトゥーンの中では、珍しく人間の主人公。しかもギャグばかりでなく、キュートさや女性らしさでも観客を魅了していた事。また我々が通常思い浮かべる「美人の絵」とは、まったく違うベクトルでデフォルメされた顔なのに、思わず「可愛い!」と思ってしまうその魅力など、ガールズとの共通点は多い。時代的には遠く60年の隔たりがあっても、パワーパフガールズの中には過去のトゥーンのエッセンスが“スパイス”として息づいているのだ。

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