ヒーローとヒロインと悪役と


 えっ、アスキーがアニメの本出すんだって!? ちょっとビックリだね。噂によると、某社からもアニメ雑誌が新創刊されるらしいし、久々にアニメ本が売れる時代がやって来たのかな?

 おっと、自己紹介が遅れたな。オレの名は眠田直。今はゲーム作りが本業になってしまったが、かつて「ガンダム」や「マクロス」などでアニメブーム華やかりし頃は「みんだ☆なお」のペンネームで、今は亡き「OUT」や「アニメック」なんつー雑誌で暴れ回ってたもんだ。こんなアニメ雑誌界では前世紀の遺物みたいな人間を今さら引っ張り出してくるなんて、アスキーもなかなかイイ趣味してるじゃないか。

 で、なんだよ。SF・ロボットアニメ系で心に残るキャラクターの魅力について語ってくれってか? よーーし、いいだろう。きっと編集部としては、「コンバトラーVの南原ちずる」とか「エヴァンゲリオンの綾波レイ」とかについてのコラムを期待してるんだろうが、オレみたいなヒネたアニメオタクに原稿発注してしまった以上、そんなマトモなセレクトにはなんないぞ。覚悟しろ(笑)。

 さーて、まず一人目は「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」(85〜86年)の航空参謀スタースクリーム様の魅力について語らねばなるまい。「トランスフォーマー」には他にも頼もしいコンボイ司令や、「頑固親父」の破壊大帝メガトロン、それに頭は悪いが気のいい奴、ダイノボットリーダー・グリムロック等々、魅力的なキャラクターが目白押しなのだが、一人に絞るとなるとやっぱしスタースクリームだな。
 スタースクリームはジェット機に変形するトランスフォーマーで、悪の軍団デストロンのナンバー2。ボスのメガトロンを倒し、自分がリーダーにのし上がる事を考えている野心家という設定で、しょっちゅうメガトロンを裏切ってばかりいるんだけど、すぐに若さゆえの甘さが露呈し、メガトロンに逆襲され、最後は「お許し下さい、メガトロン様〜!」というのがパターンのちょっと情けない奴。
 でも声優がイイ。英語版では(あ、忘れてたけどトランスフォーマーは日米合作ね)、単純な「小悪党」てな感じの声なんだけど、日本語版では二枚目役の多い鈴置洋孝(ガンダムのブライトやドラゴンボールの天津飯)がアテてる事によって、「一見、美形悪役のようだが、実はバカ」という奥の深いキャラになってるんだ。
 まぁこんな裏切り者を、毎回許しているメガトロンの「懐の広さ」も素敵だ。さすがに映画版の「トランスフォーマー・ザ・ムービー」では今までの行いがたたって、新破壊大帝ガルバトロンに殺されちゃうけど。
(でもその後のシリーズ「トランスフォーマー2010」(86〜87年)では「ロボットの幽霊」として復活するんだ。そのしぶとさが好きだぞスタースクリーム!)

 イイ悪役の次にはやはりヒーローの話を。最近見た、一番カッコイイSFアニメのヒーローはなんと言っても「クレヨンしんちゃん」(92年〜放映中)のアクション仮面をおいて他にあるまい。ツボを押さえたシンプルなデザイン、スピード感あふれるキレのいいアクション、正義を愛する心、頼もしい玄田哲章の声、それに本郷みつる監督の演出と高倉佳彦作画のパワーもあいまって、そんじょそこらのアニメ・特撮じゃかなわない程の正統派ヒーローがここに誕生!
(ギャグ物の「クレヨンしんちゃん」の中にしか、純粋な「正義の味方」が描けない今のアニメ界というのも、ちょっと悲しい気はするなぁ)
 最初は単に主人公の5歳児・野原しんのすけが観ているTVの中に登場する劇中劇ヒーローだったんだけど、スペシャルで「アクション仮面」の独立したエピソードが作られるようになり、さらに映画「クレヨンしんちゃん・アクション仮面VSハイグレ魔王」(93年)では準主役を張ってしまったほどの出世ぶり!
 その後「アクション仮面Z」「アクション仮面フィーバー」と改造を重ねて今にいたるんだけど「フィーバー編」の最終回、「命をかけて!最後の決戦」には感動したね。戦いには勝利したものの、パワーアップアイテムであるフィーバーベルトを失ってしまったアクション仮面。「また新しいアイテムを作ってやるから大丈夫だ」と言う郷博士に、彼はこう答える。
 「博士、申し訳ないのですが。…これからはパワーアップに頼らず、原点に戻ってがんばっていきます。目先の事に捕らわれて変わっていくだけでは、結局、何も手に入れる事はできないと思うのです」
 いいぞ、アクション仮面! でもコレって安直なパワーアップを繰り返すセー○ー○ーン、いやいやアニメ界全体への皮肉!?

 さて、悪役、ヒーローと来たら最後はやっぱしヒロインの話を。SF・ロボットアニメのヒロインというと、やっぱし男まさりの勝ち気なタイプか、ヒーローに守ってもらうお嬢様タイプか、そのどちらかが多いんだけど、オレとしてはそのどちらでもない「銀河漂流バイファム」(83〜84年)のマキ・ローウェルを挙げておこう。赤のアポロキャップに、オレンジ色の開襟シャツ、白い短パンというボーイッシュないでたちのキャラクター。
 まぁ「バイファム」はSF版「十五少年漂流記」だから、女の子のレギュラーだけでもクレア、ペンチ、シャロン、ルチーナ、カチュア、それにマキと6人もいるから、差異をつける為に「少年っぽい女の子」にしたんだろうけどね。
 …で、マキは自分の事を「あたい」と呼ぶんだけど、これがもし「ボク」って言ってたら、オレはもっとクラクラきてたろーね。
 あ、いかん。ヒロインの話になると趣味がバレる(笑)。ボロが出ないうちにとっとと退場する事にしよう。さらばじゃ。


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