今さら言うまでも無い事だが「スタートレック」とは「未知の宇宙への冒険」を描くTVシリーズである。
…が、実はスタートレックの冒険は広大な銀河に向けてだけでは無いのだ。「SFから他ジャンルへの挑戦」も、またもう一つの魅力なのである。
最初の「宇宙大作戦」でも「地球の過去の文化体系が移植された惑星」という設定で、禁酒法時代のアメリカそのままのギャングの星へ行く「宇宙犯罪シンジケート」(カーク船長のワルモノぶりが爆笑)や、ファシズム惑星「エコス・ナチスの恐怖」(スポックのナチ将校姿似合いすぎ!)といった傑作エピソードがあったが、続く「新スタートレック」では、艦内に「ホロデッキ」という“立体映像によるシミュレーションルーム”を設定した事で、更に「異ジャンル話」が定着。
ピカード艦長がハードボイルド探偵になって活躍する「ディクソン・ヒル」や、データとラフォージが「ホームズ&ワトソン」に扮するシリーズなどは、敵役・モリアーティ教授のこれまた「ジャンルを越えた奮闘ぶり」によって、複数エピソードが作られた程だ。この他には保安官ウォーフ、流れ者ディアナ、悪役データによる西部劇「ホロデッキ・イン・ザ・ウエスト」も楽しい1本。
「ディープ・スペース・ナイン」では、ベシアとガラックの名コンビが「007の世界」から出られなくなってしまう「ドクター・ノア」が秀逸。普段「正義の人」のシスコ司令官が悪ボスだったり、実直なオブライエンが殺し屋だったりといった逆転配役や、キラやダックスといった女性レギュラー陣のお色気演技ぶりも見事。
そう、この手の「ホロデッキもの」の面白いところは、長期に渡るシリーズの中で役割が固定してしまったキャラクターたちが、普段とは違った一面を見せてくれるところなのだ。役者さんたちも通常エピソードより嬉々として演じているし。
さて最新作「スタートレック・ヴォイジャー」のホロデッキでは、なんとトム・パリスとハリー・キムの若者コンビが、50年代B級SF映画調の「キャプテン・プロトン」の世界に行く「Bride of Chaotica」なんていうマニアックなエピソードまで出たぞ。レトロフューチャーなコスチュームに光線銃、おまけに画面はモノクロというこだわりが泣かせる。戦う敵は「クモ人間の女王様」に扮するキャスリン・ジェインウェイ艦長! 日本での放映はまだかなり先だが、早く観たいぜっ!