○タイトル
はるか「スターピンキーQ、CDスペシャルドラマ・マイカの秘宝、前編」
○スターブリーム号・船長室
SE:自動ドアの開く音(長い間使ってなかったので、重い音)
はるか「スターブリーム号船長室…。ここが昔、私の使ってた部屋ね」
はるか「しかしまぁ、散らかってるなぁ。以前の私もやっぱり片付けとか嫌いだったのかなぁ?」
はるか「ま、いいか。さーてと…」
捜し物をするはるか。(ガソゴソ音)
はるか「わわわわっ!」
SE:ガチャガチャガチャ、ドシーーン!
乱雑に積んであった機械類が崩れる。
はるか「いったーーーい! …トホホホ」
その音を聞いて、マリオンとタルトがやってくる。
タルト「なにやってんですか、おねーさまぁ?」
マリオン「そうですよキャプテン、こんな夜中に…」
はるか「いや、実はね…。昔の私、つまり元のスターピンキーQってどんな女の子だったのかーとか考えはじめたら、気になって眠れなくなっちゃって…」
はるか「で、ここだったら、何か昔の事を思い出す手がかりがあるんじゃないかなぁなんて思ってさぁ」
マリオン「…そうですね。三年前に記憶を封印したのはキャプテンご自身ですから、その解除の仕方もキャプテンにしかわかりません。確かに、その為のキーがここに残されている可能性はありますね」
タルト「そうね。この部屋は完全におねーさまのプライベート・ルームで、私たちもあんまり入った事ないもんね」
はるか「なるほどなるほど…。じゃ、悪いけど手伝ってくれない? とりあえず、今ひっくり返しちゃったこのラジカセみたいな奴、元に戻さなきゃ…」
マリオン「はい、キャプテン」
はるか「じゃ、そっち持ってね。せぇの! よいしょっと」
三人でガタガタと部屋を片付けはじめる。
タルト「あれぇ?」
はるか「ん、何かあったぁ?」
タルト「このマグカップの下のコースター、記録ディスクじゃないですかぁ?」
はるか「どれどれ、あ、そういえばこれCDみたいね」
マリオン「ほう、確かに記録ディスクですね。うーーん、かなり腐食していますが、なんとか再生できそうです。試してみましょう」
マリオン、ディスクをプレイヤー(さっき倒した機械)にセットする。
(SE:プレイヤーの開閉音、ディスク収納音など)
はるか「へーー、それがプレイヤーだったんだ」
ディスクの声(Q)「(多少ノイズ入る)……航星日誌、宇宙歴25607・314。オルドビス軍との長きに渡る戦いは、未だ決着がつかないまま、膠着状態に陥っていた。その日、私は銀河系第87エリア、アルコナス恒星系第7惑星『ジカール』からの緊急コールで、オルドビス軍の奇襲攻撃を知らされた。私は直ちに、ジカールへと急行した」
はるか「…これ、ひょっとして私の声?」
マリオン「ええ、そうですね。キャプテンのつけていた航星日誌の一部です」
タルト「へええええ、珍しい。おねーさまって、きっちり記録つけたりするのって、大の苦手だったもんね。ごくたまーーに日誌つけたりするけど、たいがい三日坊主でさぁ…」
はるか「……う」
マリオン「そういうわけで、これは大変貴重な物です。続きを聞いてみましょう」
以下、ディスクの内容に入る。
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○スターブリーム号コクピット
SE:スターブリーム号飛行音
マリオン「キャプテン、ジカール星が見えてきました。敵・オルドビス軍は首都ペラオを攻撃中です」
Q「よし、大気圏突入準備!」
タルト「はーい、シールドを張りまーす!」
SE:シールド音
マリオン「急速降下!」
SE:降下音
マリオン「現在、高度1万ヘクタ。レーダーで敵の種別及び総数を確認します」
SE:マリオン、レーダー操作音
マリオン「出ました。メガモンス『ウインガー』、陸戦タイプ30機!」
タルト「ええ〜っ? 30機もいるのぉ」
マリオン「おかしいですね。ここは戦略的にはさして価値の無い星。そんな所に30機ものメガモンスを投入するなんて…」
Q「…確かに。シルル女王は何を企んでいるのかしら?」
マリオン「高度5000!」
Q「よし、接近戦準備! 出るわよ、マリオン」
マリオン「はい、キャプテン」
Q「タルトはここに残って援護射撃をお願いね」
タルト「わかりました、おねーさま」
○空中
SE:スターブリーム号下部ハッチ開閉音
Q「ピンキーボード!」
Q、空中にボードを投げ、その上に飛び降りる。
Q「GO!」
SE:ピンキーボード飛行音
SE:マリオン、ユニット装着音
マリオン「オプションユニット・ナンバー05、装着完了!」
マリオン「アーマード・マリオンR、発進します」
SE:マリオン飛行音
○地上
SE:グイイイーーッ(ウインガーの鳴き声)
首都ペラオを破壊するメガモンス軍団。
SE:破壊音、爆発音多数
Q「ふん、メガモンスどもめ。いつまでもあんたたちの好きにはさせないわよ!」
Q「Qサンダー!」
SE:バリバリバリバリ!(Qサンダー音)
SE:大爆発音
SE:グギーーーッ(ウインガーの断末魔)
Q「よぉし、まずは一機!」
マリオン「バストミサイル発射!」
SE:ミサイル発射音
SE:大爆発音
Q「それ、もう一丁!」
SE:バリバリバリバリ!(Qサンダー音)
SE:大爆発音
SE:グギーーーッ(ウインガーの断末魔)
Q「これで合計三機!」
SE:ピイイイイイイイッ!
レーザー光線を発射するウインガー。
Q「当たるものか!」
SE:ピンキーボード飛行音
ヒラリ、ヒラリと軽々と光線をかわすQ。
Q「スキあり! ピンキー・クラッシュ!」
SE:ドガッ!(クラッシュ命中音)
SE:大爆発音
Q「四機め!」
SE:ウインガーの足音多数
マリオン「散らばっていたウインガーが集結して来ます! 数は22、いや23、24…」
Q「一機ずつ倒してたんじゃキリが無いわね。よーし、まとめて始末してやるわ」
Q「はあっ!」
Q、静止して気を集中させる。
SE:シュワワワワワワ…(エネルギー蓄積音)
SE:グイイイーーッ(ウインガーの鳴き声)
SE:ガシャン! ガシャン!(ウインガーの肩のフタが開く音・多数)
マリオン「あれは…」
SE:ドドドドドドドドドドドドドド(ミサイル弾発射音・多数)
マリオン「小型ミサイル、多数接近!」
SE:ミサイル飛行音・多数
Q「マリオン! 楯になれ!」
マリオン「はいっ!」
マリオンに命中するミサイル群。
SE:小爆発音多数。
マリオン「…ううっ!」
Q「あと3秒、持ちこたえろ!」
マリオン「(悲痛な声)はいっ!」
SE:シュワワワワワワ…(エネルギー蓄積音)
Q「…2、…1、…0。よーし、もういいわ!」
マリオン「はいっ!」
Q「必殺! Qプラズナー!」
SE:ヴイイイイーーーン!(Qプラズナー発射音)
Q「行っけぇ〜〜!」
巨大なプラズマボールがウインガーの群れを押しつぶす。
SE:ピカッ!
SE:大爆発音多数。
(少し間)
マリオン「敵・メガモンス部隊、全機破壊を確認」
Q「ふう…、やったか」
Q「うーーん、この技はいっぺんに多数の敵をやっつけられて便利なんだけど、パワーの蓄積に時間がかかるのが欠点ね」
マリオン「(さすがにダメージを受けて)……そ、そうですね」
SE:円盤上昇音
マリオン「キャプテン! 敵の母船が逃げていきます!」
Q「あっ! あのマークはシルルの旗艦じゃない!」
マリオン「有効射程範囲を出ました。ここからでは攻撃できません!」
Q「タルト、タルト! 聞こえる?」
タルトの声「はい、おねーさま」
Q「そっちにオルドビス軍の円盤が行ったわ。撃墜できる?」
タルトの声「わかりました! やってみます!」
○上空
SE:円盤飛行音
タルト「プロトン砲、発射!」
SE:スターブリーム号・プロトン砲発射音
SE:円盤飛行音
タルト「ああん、なんで当たらないのぉ?」
○地上
タルトの声「ああっ、逃げられちゃった…」
Q「…ふっ、仕方ないか。タルト、スターブリームをこっちに降ろして」
タルトの声「了解」
SE:スターブリーム号着陸音
SE:スターブリーム号・ハッチ開閉音
タルト「ごめんなさいおねーさまぁ。タルト、がんばったんだけど、照準セットがうまく行かなくて…」
Q「いいのよ、次はうまくやってね」
タルト「はいっ、おねーさま!」
SE:ザワザワ声
Q「んん?」
マリオン「キャプテン、ジカール星の市民です」
三人の前に、数人のジカール星人が現れる。
ジカール星人A「(発声練習)あああ、あー、あー」
ジカール星人A「(唄う)おおおー、あーーりがとうーございました〜〜」
ジカール星人B「ございました〜〜」
ジカール星人C「ました〜〜」
ジカール星人A「さ〜すがはーー、スターピンキーQ」
ジカール星人B「その名も高き〜、宇宙の勇者〜」
ジカール星人C「ブラボー、オー、ブラボー!」
Q「…………な、なんなのよ、こいつらは」
マリオン「キャプテン、ジカール星ではすべての言葉が歌になっているのです」
Q「えーっ! …って事は、ここはミュージカル惑星ってワケ?」
マリオン「より正確に言うと、オペラですね」
Q「うーーーん」
ジカール星人A「讃えよ、スターピンキーQ〜〜」
ジカール星人B「そして、その仲間たちを〜〜」
タルト「きゃははっ、面白ーい」
Q「…あ、頭痛くなりそう。さ、二人とも、引き上げるわよ」
タルト「えーーっ? タルト、もうちょっと聞きたいな」
Q「こんなのをぉ?」
ジカール星人A「ああ、正義の勇者スターピンキーQよ〜。しかし、あなたは一歩遅かった〜〜」
ジカール星人B「そう、遅かった〜」
ジカール星人C「遅かった〜」
Q「えっ?」
ジカール星人A「ああ、一歩遅かった〜〜」
ジカール星人B「そう、遅かった〜」
ジカール星人C「遅かった〜」
Q「何が遅かったって言うのよ?」
(少し間)
ジカール星人A「ああ、一歩遅かった〜〜」
ジカール星人B「そう、遅かった〜」
ジカール星人C「遅かった〜」
Qの質問に答えず、歌を繰り返すジカール星人たち。
Q「だから何が遅かったって聞いてるの!」
マリオン「キャプテン、駄目ですよ。ここでは歌にしないと相手に意志が通じません」
Q「げっ!」
ジカール星人A「ああ、一歩遅かった〜〜」
ジカール星人B「そう、遅かった〜」
ジカール星人C「遅かった〜」
Q「……しゃあない、やるか。よーし、マリオン、タルト、一緒に唄うのよ」
二人「はいっ!」
Q「いったいーー、なにが〜、遅かったって言うのよぉ〜〜」
マリオン「教えてほしい、私達に〜」
タルト「そう、それを知りたいの〜」
(少し間)
Q「歌にしたのに、通じないじゃないの!」
マリオン「うーーん、三人の音程が合ってないせいだと思われます。もう一度やってみましょう」
Q「くうううーーーーっ」
Q「(諦めて唄う)いったいーー、なにが〜、遅かったって言うのよぉ〜〜」
マリオン「教えてほしい、私達に〜」
タルト「そう、それを知りたいの〜」
(少し間)
ジカール星人A「おおおおー、それ、それ、それをお伝えしなければーー」
マリオン「通じたようです」
Q「あーーっ、なんてうざったい星なの! うぎぎぎぎぎ…」
マリオン「ま、そうイラつかないで…」
ジカール星人A「おおお、憎むべきはーー、オルドビス軍団〜〜」
ジカール星人B「平和な我が星に〜、戦争を〜、恐怖と、破壊もたらした宇宙のーー、悪魔〜」
ジカール星人C「それだけではない〜、奴らは〜、ジカール星の国宝、マイカ・ストーンを盗み出して行ったのだ〜〜」
ジカール星人A「おお、許すまじ〜、オルドビス軍団〜」
Q「そ〜の〜、宝とは〜」
マリオン「マイカ・ストーンとは〜」
タルト「いったいなぁに?」
ジカール星人A「おお、マイカ・ストーン、神秘の輝き」
ジカール星人B「ジカール星人の、心のささえ〜」
ジカール星人C「宇宙に三つしかない、奇跡の宝石〜、その価値やいくばくかーー」
ジカール星人A「いやいや〜、とても金には替えられぬ〜」
ジカール星人B「秘めしパワーははかりしれぬ〜」
Q「そ〜れ〜をぉ、オルドビス軍団に盗まれたって言うのぉおぉ〜」
ジカール星人A「そーーでーす」
ジカール星人B「そーでーす」
ジカール星人C「そでーす」
Q「しまった〜、さっきいぃぃ、逃がしたーー、円盤かーー」
ジカール星人A「あああ〜、マイカ・ストーンのパワーをぉ、悪用されーたらー、大変な事になりまーーす」
ジカール星人B「取り戻して下さいスターピンキーQ〜! オルドビス軍団からマイカ・ストーンを〜」
Q「よーーし、マリオーン、タルトーー。スターブリーム発進準備ぃぃ〜。円盤を追うのよ〜〜」
タルト「おねーさま、私たちに話す時は、別に歌にしなくても…」
Q「……あ、そうか。と、とにかく発進よ!」
二人「はいっ!」
三人、スターブリーム号に乗り込む。
Q「スターブリーム号、緊急発進! GO!」
SE:スターブリーム号・上昇音
******************************************************************************
SE:ブチッ!
ディスク再生、突然途切れる。
はるか「あれっ? どうしちゃったの。止まっちゃったわよ!」
マリオン「変ですね」
SE:プレイヤーの開閉音
はるか「どう、マリオン?」
マリオン「うーーーん。やはりディスクがかなり錆びてますからねぇ。ところどころ再生できない箇所があるようです」
はるか「えええーーーーっ? そんなのやだー」
マリオン「ディスクをコースターなんかにするからですよ。ほら、ここんとこにコーヒーの痕が」
はるか「うううう…。ねぇマリオン、なんとかならない? この先、どうなったのか気になるし」
タルト「タルトも聞きたーい。だって昔のおねーさまったら、りりしくて素敵なんだもん…」
はるか「あっそ」
タルト「あっ、あっ、今のおねーさまももちろん素敵ですよぉ!」
マリオン「わかりました。少し時間はかかりますが、なんとかディスクを修復してみましょう」
タルト「やったぁ!」
はるか「…で、修復にはどのくらいかかるの?」
マリオン「そうですね。○月×日(CD2枚目の発売日)までにはなんとか…」
はるか「…な、なによその妙に具体的な日付は?」
タルト「と、いうわけで後編につづくっ!」