#4「琴菜の疑惑 タルト変身大作戦」(94/09/05)


○扉ページ(カラー)
   はるかVSメガモンスの市街戦。
   (時間的には#3のラストから2ケ月くらい後。その間、はるかは何回かメガモンスとの戦いを繰り返し、経験を積んでいる。)

   グオーーーーン!!
   振り降ろされるメガモンスの巨大な腕。
はるか「遅いっ!」(余裕のある表情で)
   ボードに乗ったはるか、難無くその腕をよけ、攻撃に転じる。
はるか「ピンキークラッシュ!」
   グワシャッ!!
   バトンが延びて、メガモンスの目の部分(弱点)を刺し貫く。

○タイトルページ(カラー見開き)
   バック、爆発するメガモンス。
   「おおーーっ!」てな感じで、歓喜の声を上げる群衆。
   はるか、「イェイ」とか言って群衆の声援に応えている。

   いつものパターンで、逃げ去っていくシルルの脱出艇。
シルル「くううううっ、おぼえてろーーーーーーーーっ!」

○新聞記事のアップ
   見出し「スターピンキーQ、またまた大活躍」
   Q(はるか)の写真も載っている。
織田「ふーーーむ」

○学校(翌日・放課後)
   織田先輩のクラス。超研のメンバーと、はるか、琴菜たちがたむろしている。
   (まだ部室が無い)
   新聞を広げている織田先輩。
伊吹「本当にすごいですよね、スターピンキーQって」
伊吹「カッコイイし、可愛いいし、その上、あの巨大なロボット怪獣を簡単にやっつけちゃう位強いし…」
   はるか、新聞記事を横目で見ながら、
はるか「(心の声)へへっ。やっぱり、悪い気分じゃ無いよね」
琴菜「でも最近じゃ、一面トップは東京スポーツだけですね」
織田「やっぱり世間一般では、政治改革とか円高対策とかの方が重要なんだねぇ」
   ズルッ、とコケるはるか。

伊吹「最初は大騒ぎだったけど、すぐみんな慣れてしまいましたねぇ」
織田「日本人ってそーゆートコあるからなー」
織田「ま、他はどうあれ、我々超常現象研究部としては、この一連のロボット怪獣事件を引き続き研究対象にしたいと思う。どうも宇宙人も絡んでいるようだし」
飛鳥「そうよね。だいいちスターピンキーQって、いったい何者なのかしら?」
伊吹「見た目は普通の女の子みたいなんだけど」
織田「でも、ただの女の子のはずは無いな。エスパーなのか、それとも宇宙人か…」
はるか「(心の声)…う、なんかマズイ雲行きだなぁ」
琴菜「(新聞の写真を見ながら)ねぇ、Qってなんだかはるかちゃんに似てない?」
はるか「ギクッ!」
琴菜「着てる服もウチの学校の制服みたいだし」
はるか「ギクギクッ!」
織田「うーーん、そう言われれば似てるような…」
琴菜「……もしかして、はるかちゃんがスターピンキーQ」
   一同、疑惑の眼差しではるかを見つめる。
はるか「(焦って)あはははははははははは。ええっ! そんなに似てるのぉ?」
はるか「(新聞を手に取って)わぁ、ホントだ。……う、嬉しいなあっ! 正義の味方スターピンキーQに似てるなんて光栄な事よね」
はるか「そうだわ、今度テレビのものまね番組に出てみよーかしら。『Qふらっしゃあ〜〜っ!!』なんつったりしてしてぇ」
   わざとらしくポーズを取るはるか。
   (おどけて見せて、雰囲気を変えようとしている)
織田「おっ、なかなか感じ出てるね」
伊吹「文化祭でやったらウケるよ」
   笑う先輩たち。琴菜のみが不審そうな目ではるかを見ている。
琴菜「……………………」

○路上
   帰宅途中のはるかと琴菜。
はるか「まーーったく琴菜ったら想像力豊かなんだからぁ。私がスターピンキーQ? ホントにそーだったらイイよねー。…あは、あはははは」
琴菜「(うつむきながら)………スターピンキーQが活躍してる間って、なぜかいつもはるかちゃんの姿が見えなくなるのよね」
はるか「うっ!(ドキッ…)そ、そーだっけ?」
琴菜「最近のはるかちゃん、前と変わったわ…。」
   琴菜、顔を上げ、はるかの方を向き、
琴菜「はるかちゃん、何か隠してる」
琴菜「私たち、友達じゃないの。本当の事を言ってよ!!」
はるか「……え? か、隠し事なんかしてないよぉ」
琴菜「(はるかをにらみつけ)……嘘」
   琴菜、頬に涙が伝っている。
はるか「(困って)……………………………」

○はるかの家
はるか「ああああ、参ったなー。琴菜、完全に私の事疑ってるよぉ」
   テーブルを囲んで話しているはるか、マリオン、タルト。
タルト「??? 別に隠す事無いんじゃないですかぁ?」
タルト「我こそは宇宙の勇者スターピンキーQ!! って堂々と宣言しちゃえば良かったのに…」
はるか「そ、そーはいかないわよ」
マリオン「(小声でタルトに)キャプテンは、まだ平凡な一中学生、星野はるかとしての生活に未練があるんですよ」
タルト「えー、そんな柄じゃ無いのにねー」
はるか「ねぇマリオンR、どうしたらいい?」
マリオン「……そうですねぇ」
マリオン「(ポンと手を叩き)そうだわ。星野はるかとスターピンキーQが同時に現れれば良いのです。そうすれば、二人は同一人物ではないと琴菜さんに思わせる事ができます」
はるか「そりゃそーだけど、どうやって?」
マリオン「我がピンキーチームには、頼れる仲間タルトPがいるじゃないですか」
タルト「…え?」

○同
マリオン「では練習してみましょう」
タルト「……えーと、おねえさまの形になればいいのね」
   タルトP、ぐにゃぐにゃと変形してはるかの姿に。
マリオン「うん! 完璧な変身ですね、キャプテン」
はるか「…………………………」
   なんとなく輪郭が定まらず、ぶよぶよのはるか。
はるか「あ、あたしこんなにデブじゃない…」
   はるか、タルトのウエスト部分を手でギュッと握る。
タルト「うげっ!」
はるか「ここはもっと細く!」
   はるか、気に入らない部分をいじり始める。
はるか「顔だってもっと可愛いし、足だってもっと綺麗に…」
タルト「痛い痛い! やめて下さいおねーさまぁ!!」
   ポンッ! と本来のスライム形態に戻るタルトP。
タルト「無理言わないで下さい。人間の形になるだけでも、結構集中力いるんですよぉ」
   タルト、もう一度はるかの姿(前とあまり変わらない)に変形しながら、
タルト「やっぱり、このくらいが限界かなぁ」
はるか「じゃ、せめてもう少し胸を大きく……」
マリオン「(呆れて)キャプテン……」

○翌日・通学路
はるか「(声のみ・足元のアップ)行ってきまーす!」
   元気に家を出たはるか、はたと足を止め、
はるか「ねぇタルトP」
タルト「はい、おねえさま」
はるか「どうしてそんなトコに乗ってるのよ?」
   スライム形態のタルトP、帽子みたいにはるかの頭の上に乗っている。
タルト「だってオルドビス軍はいつ来るかわからないもん。こうしていればすぐにおねえさまと入れ替われるわ」
はるか「…あのねぇ」
織田「(声のみ)やぁ、星野くん。おはよう」
   はるか、ギクッとして振り向く。
   織田先輩、バイクを止めてはるかの方を見ている。
織田「何それ? 面白いね」
はるか「あーーー、えーーと、昨日買ったぬいぐるみでーーーす」
織田「(タルトPを指を触りながら)へー、変わった素材だなぁ」
   織田、タルトを頭に乗せているはるかを眺め、
織田「(邪心の無い表情で)それ、なかなか似合うよ。可愛いね」
織田「じゃ、お先に」
   織田先輩、バイクで行ってしまう。見送るはるか。
はるか「……今の、喜んでいいのかしら」
タルト「馬鹿にされてんじゃないですかぁ?」
はるか「でえええええぃっ!」
   はるか、怒ってタルトを投げ捨てる。
はるか「そう思ってんなら降りなさいよっ!」
タルト「…やれやれ。じゃ、この姿ならいいでしょ?」
   タルト、ネコの形に変身する。
タルト「これなら怪しまれないし…」
はるか「(首を振り)…足が多い」
タルト「え?」
   タルトの変身したネコ、8本足である。

○学校・はるかのクラス
   授業中の光景。
   はるか、琴菜の事を気にしてチラチラ見ている。琴菜の表情、堅い。
はるか「(心の声)あー、早く来てくれないかなー、オルドビス軍団。そうすれば琴菜も…」
…と、クラスメイトたちがざわめき出す。はるか、窓の方を見る。
はるか「げっ!」
   タルトの変身したネコ、ヤモリの様にガラスに張り付いてペタペタと歩き回っている。
はるか「(心の声)あいつめ〜〜っ!」
先生「はーい、みなさーん! 授業に集中してちょうだい!」
生徒A「でも先生、あのネコちょっと変…」
先生「いいから! 今は理科じゃなくて歴史の時間よ」
先生「さて、一七七六年、ババリアでヴァイスハウプトらによって結成されたイルミナティはその後……」
   ドドーン!! 市街地の方からメガモンスの落下(着陸)音が響いてくる。
はるか「来たぁ!」
   そっとPベルを確認する。「QQQQQQ」の文字が表示されている。
   校内に警報が鳴りわたる。
先生「…またぁ?」
   先生、ため息をつきながら教科書を閉じる。
先生「はいはーい、皆さーん、どうやら街にロボット怪獣が出たようです。いつものように落ち着いて避難して下さーい」
   ぞろぞろと廊下に出る生徒たち。(緊迫感無し)
   はるか、さっと抜け出して屋上へと走る。

○学校・屋上
   スターブリーム号が停泊している。
   タルトネコ、ムササビ状に皮翼を広げてスーッと飛んでくる。
   はるか、ピンキーアイを装着し、バトンを延ばしながらタルトに、
はるか「……ねぇタルトP、今後の事もあるから言っとくけど」
はるか「もう少し地球の生物について勉強しといてよねっ!」
タルト「え?」
マリオン「キャプテン、急いで下さい!!」
   マリオン、はるかにボードを投げる。
はるか「オッケー!」
   はるか、ボードに飛び乗り、空へ。
はるか「GO!」
タルト「それじゃ、あたしも…」
   タルト、再び変形を始める。

○学校・廊下
   はるかの姿を探す琴菜。
琴菜「はるかちゃんの姿が無い。やっぱり…」
タルト「はーい、私はここでぇーす」
   琴菜の前に現れた輪郭の定まらない怪しいはるか。
琴菜「(少し不審そうに)…え、あ、はるかちゃん、だよね?」
タルト「ねぇねぇ、ここを抜け出して、スターピンキーQの活躍を見に行かなぁい?」
琴菜「えっ?」

○市街地・路地裏
   琴菜の手を引いて走るタルト。
琴菜「はるかちゃん、ちょっと危ないんじゃない?」
タルト「へーきへーき。どうせなら、なるべく近くでおねーさま…、じゃなかったスターピンキーQを見ましょうよ」
タルト「(上を見上げ)ああっ!」

○市街地
   はるか、ビルの谷間の張られた、巨大なクモの巣にからまって動けない。
   スカートまくれてて、ちょっと恥ずかしい(と、いうか無様な)格好。
   シルル、クモ型メガモンス・スパイダルクスの操縦席から身を乗り出し、勝ち誇る。
シルル「おーほっほっほっほ! どう、スパイダルクスの特製粘着糸の威力は?」
はるか「……うううううう」

○路地裏
タルト「やだ、大ピンチになってるぅ」
タルト「(横目で琴菜を見ながら)ど、どうしよう。助けに行きたいけど、ここを動くわけにもいかないし…」

○スターブリーム号・操縦席
   一人冷静なマリオンR。メインモニターに、はるかの様子が映っている。
マリオン「粘着糸の成分を分析。スペースナイロン36%、コズミックテトロン64%。これなら…」

○空
   スターブリーム号のハッチから、はるかの救援に飛び出すマリオンR。
   (背中にロケットパック、右腕に火炎放射ユニットを装着している)
マリオン「600度以上の熱を加えれば、あの粘着糸は融解するはず!」

○ビルの谷間
シルル「さーーて、どう料理してやろうかしら」
   もがくはるか。
はるか「こ、このままじゃやられる…」
   …と、その時、マリオンRが到着する。
はるか「マリオンR! 助けに来てくれたのね!」
   マリオン、火炎放射器の銃口をはるかに向ける。
はるか「……え?」
   ゴオオオオオオオオオオオオ!!
   超強力な火炎放射で粘着糸が解け、黒コゲのはるか、地上に落下。
はるか「…む、無茶しないでよ!」
マリオン「ピンキー星人は五千度の高熱にも耐えられます。この程度なら許容範囲内でしょう?」
はるか「あ、あのねー」

○スパイダルクス・操縦席
デボン「あーーあ、逃げられたかぁ」
シルル「…ま、まだこっちが有利よ。このまま踏み潰してやるわ!」

○ビルの谷間
   ドドドドドドドドド!
   前進するスパイダルクス。
マリオン「キャプテン、あぶない!!」
   はるか、パッと身を起こし、バトンを地面に突き立てる。
はるか「おかえしよっ! ピンキー・グランドウェーブ!!」
   スパイダルクスに向かって地割れが走る。
シルル「いっ!?」
   シュバッ!!
   地中から出た光(地脈エネルギー)がスパイダルクスをまっぷたつに分断する!
   どどーーーーん!!
   大爆発を起こすスパイダルクス。
シルル「ひーーーーーーーん、またこうなるのぉ!」
デボン「やれやれ」
   脱出艇で逃げ去るシルルたち。

○路地裏
タルト「やったぁ!」
   大喜びするタルト。
   …と、スパイダルクスの破片が琴菜たちの頭上の看板に激突。
   その衝撃で、落下してくる看板。
タルト「あぶない!!」
   タルト、とっさに琴菜を突き飛ばす。
   ぐしゃっ! 看板の下敷きになって潰れるはるかの姿のタルト。
琴菜「いやあああああああああああっ!」
   あまりの事に気を失う琴菜。
タルト「あたたたたた…」
   看板の下からぐにゃぐにゃとアメーバ状になって這い出すタルト。
   気絶している琴菜に気付き、
タルト「……あ」

○エピローグ
はるか「琴菜、琴菜ぁ!」
琴菜「…う、ううん」
   目覚める琴菜、眼前にはるか(本物)の顔。
琴菜「(驚いて)はるかちゃん!!」
琴菜「良かったぁ。てっきり死んじゃったかと思っちゃった」
琴菜「(泣きながら)…良かった、本当に良かった」
はるか「……琴菜」
  泣きじゃくっていた琴菜、ふと顔を上げ、
琴菜「でも、はるかちゃんの傷、どうして打撲じゃなくて火傷なの?」
はるか「う゛……」
   −−−チャンチャン! てな感じでおしまい。


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