○宇宙
漆黒の宇宙に浮かぶ不気味な形の惑星。
N「銀河系からはるか遠く、ガンマ第33暗黒星雲に浮かぶ名も無い惑星」
N「ここに銀河系侵略をもくろむ、カンブリア星人の前線基地が設置されていた」
○基地内
巨大なドームの内部。
遊星大使を取り囲む様に、20匹くらいのカンブリア星人が宙に浮かんでいる。
リーダーらしきカンブリア星人の一匹が話しはじめる。
(下にテロップ「カンブリア星人」)
カンブリア星人A「スターピンキーQ抹殺計画が失敗しただと?」
カンブリア星人B「バカな! ネオUPBが効かないはずは無い!」
遊星大使「申し訳ありません。あともう一歩の所を、ピンキーゼブラに邪魔されまして」
星人C「ピンキーゼブラ!? ううむ、あの死にぞこないめ! 懲りもせずに我々に挑戦する気か」
星人D「しかし、なぜゼブラに我々の計画がバレたのだ?」
星人E「………………………」
遊星大使、星人Eの体表面に縞模様のカラーリングが施されている事に気付く。
遊星大使「むっ!」
大使、レーザーガンで星人Eを撃つ。
頭部を破壊され、床に落ちる星人E。
遊星大使「ゼブラのスパイロボットです」
星人A「おおっ、そう言われれば露骨にシマ模様のペイントが!」
星人B「我々カンブリア星人は、普段“視覚”を使わないからなぁ…」
遊星大使「今後は気をつけて下さいね」
星人A「いやー、すまんすまん。ところで、お前の報告にある“地球”だが、そんなに素晴らしい星なのか?」
遊星大使、地球の立体映像を出して説明する。
遊星大使「はい、この小さな星の上に56億もの人間がひしめきあっております」
遊星大使「科学レベルはたった0.3。軍事力もとるに足らない程度なので、簡単に征服できます」
遊星大使、ニヤッと笑って、
遊星大使「我々の食料補給基地には最適です」
星人A「クックックッ…。そうだな」
星人B「見るからにうまそうだ。よだれが出るわい」
○地球・はるかの家
タルト「いっただきまーーす!!」
夕飯の食卓を囲んでいるタルト、マリオン、はるかの三人。
タルト「うーーーん、地球の食べ物っておいしいっ!」
タルト、手を何本も延ばして、(茶碗と箸とコップと味噌汁の碗と塩の瓶なんかをいっぺんに持って)料理にパクついている。
タルト「あ、もちろんマリオンRの料理の腕もあるけどさぁ」
マリオン「(微笑んで)そう? ありがとう」
と、言いながらマリオンは一人だけ機械油を飲んでいる。(ロボットだから)
はるか「…………………………」
はるか、考え事をしていて料理に手を付けてない。
マリオン「あの、お気に召しませんか、キャプテン?」
はるか「……ん?? いや、そうじゃなくてね」
はるか、決心した様に立ち上がる。
はるか「よしっ!」
はるか、屋根裏の梯子を昇り、スターブリーム号の下部ハッチを開け、中に入る。
タルト「どうしたのかな?」
○スターブリーム号内・船長室
はるか「ここが昔の私が使っていた部屋か…」
机の上などをゴソゴソと漁るはるか。
はるか「何か手がかりになる物は無いかしら? あっ!」
はるか、日記を見つける。
日記のタイトル「ひみつのダイアリー・宇宙歴30226」
はるか「やったぁ!! これなら…」
はるか、ページを繰る内に表情が険しくなっていく。
はるか「さ、最初の3ページしか書いてない…」
はるか「なんてズボラなあたし…」
はるか「えーい、他には…」
はるか、気を取り直して今度はロッカーを開ける。
中にはズラッと派手な服ばかり並んでいる。
はるか「トホホ…」
はるか「あ、でもこれちょっと可愛い」
気に入った一着を着てみるはるか。鏡に写った自分の姿を見て、
はるか「きゃあ、決まってるぅ! …自分で言うのもなんだけど」
次々服を着替えるはるか。
はるか「あ、これもいい!」
はるか「これも!」
はるか「これはさすがに恥ずかしいか…」
○同
はるか「はっ!」
振り向くと、タルトとマリオンが無言ではるかを見つめている。
タルト「なにやってんですか、おねーさまぁ?」
はるか「(うろたえて)あ、いや、そのね。こうすれば少しは昔の事を思い出すんじゃないかと思ってね」
マリオン「やっと記憶を取り戻す気になったんですね、キャプテン」
はるか「う、うん。ピンキーゼブラに会ってから、いろいろ気になりだしちゃってさぁ…」
はるか「なぜピンキー星は滅亡したのか? 他にも生き残りはいるのか? とか」
はるか「あなたたち、何か知ってる?」
マリオン「……さあ。私達がキャプテンと出会ったのは、オルドビス軍との戦いが始まった後でしたから」
タルト「それより前の事はわからないの。おねーさま、昔の事ってあんまし話したがらなかったし…」
はるか「(気落ちして)…そう」
マリオン「キャプテン、過去の記憶を取り戻す方法があります!」
はるか「えっ?」
○スターブリーム号内・医療室
電気椅子みたいな怪しげな装置に座らされているはるか。
(手と足の所、金属性のリングで固定されている)
はるか「(不審そうな表情)………………………………」
マリオン、はるかの頭に電極とコードのいっぱい付いたヘルメットをかぶせる。
マリオン「これはかつてキャプテンが自分の記憶を封印するのに使った装置です」
マリオン「この装置と私の電子頭脳をリンクさせ、精神治療を施します」
マリオン「うまく行けば、過去の記憶を取り戻せます」
はるか「…た、頼むわね」
マリオン「タルトP、スイッチオン!」
タルト「オッケー!」
タルト、機械のスイッチを入れる。
バリバリバリバリバリ!!!
その途端、強烈な電流がはるかの体を流れる。
はるか「のええええええええええーーーーーーーっ!!!」
はるか「(息も絶え絶えに)むぁりおおおん! こ、こではぁぁ」
マリオン「ご心配無く。激痛を伴いますが、命には別状ありません」
はるか「あ、あにょねえぇぇぇ」
マリオン「さすがピンキー星人。普通ならとっくに失神するはずなんですが」
マリオン「電圧アップ!」
タルト「はーい、電圧アップ!」
タルト、電圧のダイアルを最大に上げる。
はるか「や、やむぇりょおぉぉぉ!!」
バババババババババババババババ!!
はるか「のおおおお〜〜〜〜!!」
さすがに気を失うはるか。
マリオン「今だ!」
マリオン、自分の頭にコードを接続する。
マリオン「キャプテンの頭脳とリンク! 解析開始!!」
タルト「がんばってねー、マリオンR!!」
○上空
宇宙空間に浮かぶオルドビス軍の監視衛星。
衛星のコンピューター「監視ポイント001・スターブリーム号に異常電圧を感知!!」
○オルドビス軍・月面基地
監視衛星から送られてきたデータ(コンピューターから打ち出される穴の開いた紙テープ)を読むシルル女王。
シルル「ふーむ、これは…」
シルル「間違いないわ! 精神医療装置を使ってるのね」
シルル「面白い。なんだか知らないけど妨害してやるもんね」
シルル「ESP増幅装置の用意を!」
デボン「へ〜〜い」
○同・巨大パラボラアンテナ
シルル「(声のみ)リンク開始!!」
巨大パラボラから地球に向かってビーム発射!
○はるかの精神世界
現実世界とは明らかに違う、不思議な空間。(絵的なイメージはお任せします)
マリオン「ここがキャプテンの心の中か…」
突如まきおこる大爆発!
マリオン「きゃっ!」
シルル「(声のみ)おーほほほほほほは! なんてついてるの。精神医療装置にかかってるのがスターピンキーQだったなんて」
マリオンの目前に、バズーカ砲を抱えたシルルの姿が。
マリオン「シ、シルル女王! なぜここに」
シルル「(マリオンに気付き)ふん、甘く見てもらっちゃ困るわ。私は宇宙一のエスパーよ。失神している人間の、心の中に入り込むくらい造作も無い事」
マリオン「…くっ、しまった」
シルル「このままスターピンキーQを内部から破壊してやるわ!」
マリオン「そうはさせないわ!!」
マリオン、シルルに向かってミサイルを発射!
シルル「そんな物!!」
シルル、きっと念を込める。ミサイル、パッと消滅する。
マリオン「ああっ!」
シルル「馬鹿ね。ここは精神世界。すべてはイメージにしか過ぎないのよ」
シルル「ここじゃイマジネーションの強力な方が勝つのよ! それっ!」
シルルの足元の地面が盛り上がり、宇宙怪獣の姿に!!
マリオンに向かって火を吹く宇宙怪獣。
マリオン「ならば私も」
マリオン、宇宙戦車を作り出す。
宇宙怪獣と戦車の戦いが始まる。
シルル「(小馬鹿にしたように)ふーーん。怪獣には戦車ぁ? 常識的な発想ね」
シルル「もっと面白い事をしてほしいもんね」
怪獣、パッと無数の虫に変わる。
虫の群れ、次々と戦車の砲塔やエンジンの空気取り入れ口に入っていく。
ドーーン!! 爆発炎上する宇宙戦車。
シルル「しょせんあんたの想像力なんてプログラムの範囲内よ」
シルル「生身の人間の思考にかなうものか!」
ザアアアアアア!! 地面から何本もの小さな腕が生えてきて、マリオンを捕らえる。
マリオン「きゃあああああああ!!」
無数の腕がマリオンを分解する!!
衣服と、皮膚表面のラバー部分がはぎ取られ、メタリックな地肌が露出しはじめる。
シルル「おーーほほほほほほ! どうだまいったか」
バキッ! ついに右腕がもぎ取られる。
マリオン「…た、助けて」
シルル「あー嬉しい。ここんとこ負け通しだったからなぁ」
シルルの後ろで、マリオンの助けを求める心が次第に実体化していく。
シルル「(勝ち誇って)こーゆーのがあたし本来の姿よね。うんうん」
バコッ!!
ピンキーバトンで思いっきり後頭部をひっぱたかれるシルル。
シルル「あたっ!!」
マリオンを捕らえていた無数の腕、消滅する。
シルル「だ、誰!?」
振り向くとそこには、スターピンキーQが立っている。(過去の姿の)
シルル「げえええええっ!!」
マリオン「キャプテン!!」
Q「人の頭ん中で、ずいぶん勝手な真似してくれるじゃないの。え?」
シルル「う………………」
Q「そういう悪い子はどうなるか、たっぷり思い知らせてあげるわ。ね、シルルちゃん」
バトンをシルルに向けて構えるQ。
Q「ピンキー・ダイナマイト!!」
○オルドビス軍・月面基地
シルル「ぎゃああああああああああああああああ!!」
響きわたるシルルの絶叫。(ESP増幅装置に座ったまま)
デボン「(のんきに)あれ、どーしましたぁ。女王陛下?」
シルル「と、止めろ! 増幅装置を止めろおおおお!!」
デボン「いきなり止めると危険ッスよぉ」
シルル「いいから! 早くしてーーーっ」
デボン「んじゃ…」
デボン、スイッチを切る。
ボンッ! 余剰エネルギーがショートして爆発する増幅装置。
真っ黒焦げになるシルル女王。
デボン「だから言ったのにぃ」
シルル「……いいの」
シルル「(心の声)こ、こわかった〜〜」
○精神世界
Q「逃げられたか…」
もがれた右腕を拾い、よろよろと立ち上がるマリオンR。
マリオン「……キャプテン」
感激のあまり涙を浮かべている。
Q「あなたが泣くなんて珍しいわね、マリオンR」
マリオン「…だって、こうして昔のあなたにお会いできるなんて」
マリオン「記憶が戻ったんですね、キャプテン?」
Q「いや、残念ながらそうじゃないわ」
マリオン「えっ!?」
Q「私は、あなたの持っているスターピンキーQのイメージにすぎない」
Q「本当の私は、いまだ封印されたままよ」
Q「行きましょう、私の潜在意識領域へ」
○同
はるかの心の奥底へ向かって飛ぶ、Qとマリオン。
(マリオンの姿、元に戻っている)
目前に頑丈な鍵のかかった、巨大な扉が現れる。
扉にははるかに似た女神像がレリーフされている。
Q「この奥よ」
マリオン「でも、どうやったらこの扉を開く事ができるのかしら?」
声「それは不可能だ」
マリオン「はっ!」
女神像が喋っている。
女神像「私はスターピンキーQ、いや星野はるかの精神世界を司る者。すなわちマスター・オブ・マインド」
マリオン「マスター・オブ・マインド!?」
女神像「つまり“ココロノボス” ハー、ポックンポックン」
マリオン「(ガクッと来て)こ、ここでこーゆーハズし方をするとは。確かにキャプテンの精神の支配者だわ」
Q「…悪かったわね」
女神像「マリオンRよ、ここを開ける事は出来ない」
女神像「この扉を封印しているのは星野はるか自身。彼女は過去の自分を思い出す事に
強い抵抗があるのだ」
マリオン「…つまり、キャプテンは潜在意識の中では、記憶を取り戻したくないと思っているわけですか?」
女神像「そういう事だ。あきらめるがよい」
扉、もやに包まれて消えていく
マリオン「……そんな、いったいどうしたら」
Q「あとは私自身にやらせるしかないわ」
Q「まずはなんでもいいから行動させるのよ。そのうち答えが見つかるわ」
マリオン「…でも、それじゃあまりにもいきあたりばったりです、キャプテン」
Q「それが私のやり方でしょ。ね? マリオンR」
Q「じゃ、あとはよろしくね」
無責任な感じで消えていくスターピンキーQ。
マリオン「あっ、キャプテン!!」
マリオン「…また、また会えますよね」
Q「(消えながら)やだ、なに言ってるの、マリオンR」
Q「私はずっとあなたと一緒よ…」
マリオン「……………………………」
○スターブリーム号内
マリオンの報告を聞くはるか。
はるか「ふーーーん、なるほど。昔のあたしはそう言ったのね」
はるか「あとはあたし自身にやらせろって」
マリオン「はい、そうです」
はるか、しばらく考えて、
はるか「よぉーし! スターブリーム号発進!!」
マリオン「ええっ? どこへですか?」
はるか「どこでもいい。あたしの手がかりが残ってそうな星なら」
タルト「つまり、昔わたしたちが冒険してまわった星々ですね!」
はるか「そうそう。その辺をテキトーにみつくろってちょーだい」
タルト「了解! コース設定ぃ!」
マリオン「キャプテン!」
はるか「だってこのままじゃ気分悪いもん」
はるか「さ、レッツゴー!!」
○はるかの家
屋根から飛び立つスターブリーム号。
○そして宇宙
N「こうしてお気楽に宇宙に飛び立ってしまった星野はるか」
N「だが、その間にも遊星大使と謎のカンブリア星人の地球侵攻計画は、着々と進行しつつあった。どうなる地球!? 続きはまた次号!」